贈与にまつわるカン違い。
その贈与について、よく耳にする勘違いを3つ取り上げてみます。
贈与があったときに知っておきたいルール
財産の贈与があった場合、次のようなポイントは抑えておきたいものです。
- 現金以外の財産をもらったら、財産を評価しないといけない
- あげた人ともらった人が合意している
- もらった財産が年110万円を超えれば贈与税の申告が必要
- (住宅取得資金の贈与など)贈与税の非課税の特例を使うなら税金がゼロでも贈与税の申告が必要
- 相続時精算課税を選択するなら届出書の提出が必要(私は積極的にすすめていませんが)
- お金の贈与するなら、振込みする
- 申告するのはもらった人
確定申告する時期になってから、財産を評価することを知ったり、住宅取得のお金の贈与を受けたら非課税でも申告する必要があることを知らないなどということもよくあります。
贈与税の申告書の存在すら知られていないことがほとんど。
こうした内容を知っておいていただけると確定申告の間際になってから慌てることはなくなります。
そして、これまでによく耳にしたのがいわゆる都市伝説ともいえるもの。
今回、私がよく目にするもの、耳にするもののうち3つを取り上げてみました。
以下の3つになります。
<カン違い①>贈与税の申告をすれば贈与があったことになる
まず、結論からお伝えすると贈与税の申告は贈与があったことの証拠にはなりません。
どういうことか?
例えば、財産をあげた父親だけが「これは贈与だよ」と言っていても、財産をもらったとされる子どもが「はて?なんのことやら…」ともらったという認識でなければ、いくら申告書を提出するという形式的なことができていても、贈与がそもそも成り立っていないということになるわけです。
「贈与税の申告をしておけば、贈与の証拠になるだろ」という声を聞くことがありますが、それは間違い。
贈与税の申告書を出していることだけで、贈与があったことの証拠にはなりません。(証拠の1つにはなるけど)
贈与税の申告をしていれば贈与は成立? 贈与があったかどうかは実態で判断する | GO for IT 〜 税理士 植村 豪 Official Blog
これが日の目を浴びるのは、相続税の申告をして、税務調査があったとき。贈与したことすら忘れたころにやってきます。
大事なのは、お互いが「あげた」「もらった」と認識していることです。
<カン違い①>現金で贈与すればバレないでしょ?
お金を贈与するとなると、贈与税がかかるわけですが、これが結構高いです。
親子間(子は20歳以上)での贈与を例にとると。
- 200万円の贈与なら贈与税は9万円。
- 300万円の贈与なら贈与税は19万円
- 500万円の贈与なら贈与税は48.5万円
となると、負担もそれなりに。
その結果、通帳から現金を引き出して、現金で贈与すればバレない、という考えに至るんだとか。
現金ならバレないでしょ?と考えるわけです。
基本的に贈与税の調査というのは、ないのですが贈与があったとわかるタイミングはあります。
1つは不動産を購入したとき。
不動産を買うと、登記が動きます。住宅を建てていれば、不動産の購入資金はどこから出ているか?を確認する、いわゆるお尋ね文書が届きます。
そこで住宅資金の贈与税の非課税の申告をしていて、説明がつけばまだしも。
自己資金とされる部分がそれまでの収入と比べて多ければ、つじつまが合わないなんてことも。
その自己資金とされる部分には、実は贈与でもらったお金もあったりするわけです。税務署は毎年の収入レベルは確定申告書や源泉徴収票などからもチェックしていますから予測もします。
つじつまが合わなれば「もうちょっと詳しく見たい、知りたい…」ということにもなります。
もう1つは、相続税の申告のタイミング。相続があると、税務署は亡くなった方や親族の預金の取引履歴をチェックします。
大きな出金があれば、かならずチェックしています。
もし、小さな金額だとしても、短い期間でたくさん出金していると、結局、大きな金額に。
「このお金はどこへ??」という流れになるでしょう。
一方で、子どもの通帳にまとまった金額の入金があればそれも。「このお金はどこから来た?」とチェックされます。
現金で贈与してもらったとしても、タンス預金にしていても、それはそれで盗難とかキケンがたくさん。
結局のところ。通帳に入れたタイミングでそのお金は通帳に記帳されます。
現金での贈与なら税務署にバレないとは限らない 手渡しなら大丈夫と思った人、集合! | GO for IT 〜 税理士 植村 豪 Official Blog
ということで、「現金ならバレないでしょ?」という考えはやめておくべきかと。
<カン違い③>毎年同じ日に贈与したり、毎年同額ではいけない
「毎年同じ日に贈与しないほうがいい」
「贈与の金額を毎年同じにしてはいけない」
というアドバイスはよく聞くところ。本などでもよく見かけるワードです。
毎年、同じ日、同じ金額で贈与があると、連年贈与といって「最初から毎年贈与するのを決めていたのでは?」と最初の年にまとめて贈与があったものとされてしまうというものです。
本当に最初の年に「10年間贈与する」と決めていたならまだしも、たとえ金額が同じだからといっても、そうはなりません。
(なかなか同じ日に、同じ金額にする必要性もないでしょうが。)
そうならないようにするには、毎年、贈与契約書をつくって残しておくのがおすすめです。
(毎年契約していれば、最初から10年贈与することを決めていたなんて言えないですから。)
連年贈与とされない贈与を実行する場合に抑えておきたいこと | GO for IT 〜 税理士 植村 豪 Official Blog
よくも悪くも、贈与についてのカン違いは多いものです。
今回取り上げたカン違いについては、私も何度も目にしたもの、耳にしたものなので、知っておいていただければ。
【編集後記】
昨日は確定申告を中心に。Excelマクロのファイルが破損しているというトラブルが。あれだけ作ったのにと一瞬凹みましたが、Dropboxでファイルを巻き戻ししてなんとか救出しました。
【昨日の1日1新】
※「1日1新」→詳細はコチラ
贈与税のとある手続き
Excelマクロファイル破損を回復