連年贈与とされない贈与を実行する場合に抑えておきたいこと

  • URLをコピーしました!

 暦年贈与の実施をバックアップするサービスを各信託銀行を中心に商品化されています。

2a195644-12cf-44da-841b-e0b322086674

昨日、お客様とご一緒に頂きましたボンゴレです。

 

目次

国税局の見解「暦年贈与サポートは連年贈与ではない」

国税庁のHPにて、ある信託銀行が「暦年贈与サポートサービスを活用した贈与は連年贈与扱いになるのか?」といった内容の照会をしたのに対して、結論から言うと『サービス内容からすれば連年贈与には該当しない』とした回答が公開されました。詳細はコチラ

照会された具体的なサービス内容は以下のようなものです。

サービス内容

暦年贈与が確実に実行されるためのサポートを自行のあげる方ともらう方の口座間振替を通じて実施するとともに、贈与契約書の雛形を毎年、贈与者に渡して提出して貰い、信託銀行でその契約書を一部保管して契約行為を担保する。

契約期間

5年間(自動更新はなし)

サービスの提供時期

贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行った上、双方合意を有する場合にのみ上記サービス内容の提供を行う

照会された内容

このサービスによる贈与は一定の期間、連続して金銭をもらうことをあらかじめ契約する連年贈与(財産名は定期金に関する権利』)に該当しないと理解しているが問題ないか?

国税局の回答

あらかじめ定期的に贈与することについて贈与者・受贈者双方の合意がなされている場合でない限り、本件サービスを利用した贈与は、「定期金給付契約に関する権利」の贈与に該当するものではないと考えられます。

連年贈与とは?定期金に関する権利とされるとどうなる?

連年贈与と定期金に関する権利についてそれぞれ説明します。

連年贈与とは

例えば「10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている」といった贈与をいいます。

国税庁HP No.4402 贈与税がかかる場合にも記載があります。

ポイントは「最初の契約で○年間の一定額の贈与が約束されている」ということです。

定期金に関する権利とは

連年贈与に該当する場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要になります。

つまり「10年分が最初の年にまとめて贈与があった」とされるため、贈与税の負担額が大きくなってしまいます。

(ちなみに「定期金に関する権利」の評価方法についてはコチラ

 

つまり、最初の契約の段階で「これから10年にわたって毎年100万円ずつ贈与します。」と最初に決めて契約したものは、「連年贈与」として扱われ、贈与税の計算上は「定期金に関する権利」という財産になり、贈与税が課税されることになります。

連年贈与として、『定期金に関する権利』としての評価がされるのと、毎年100万円の暦年贈与をその都度契約したとされるのでは、税負担が大きく違ってくることになるわけです。(後者の場合には、他に贈与財産がなければ基礎控除額110万円以下で贈与税ゼロです。)

 

また、下記の相続税法基本通達を見ると毎期に受ける支分債権は定期金に関する権利に該当しないとしています。支分債権は毎期に発生する債権をいいます。

(「定期金給付契約に関する権利」の意義)

「定期金に関する権利」とは契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいうのであるから留意する。(基本通達24-1)

結論として毎年、贈与契約を締結していれば、これには該当しないといえます。

そして、更に書面による贈与の場合には贈与契約の効力が発生した時が財産の取得時期となります。

そのため連年贈与とされないためにはこの辺りを意識した対策が必要になってきます。

実行した贈与を疑われないようにやっておくべきこと

ポイントとしては契約時に複数年分をまとめて契約しているのか?(連年贈与)あるいは毎年、贈与の都度契約しているのか?(暦年贈与)という点です。

連年贈与とされるには税務署などが連年贈与であることを立証する必要がありますが、こちらとしても疑われるのを未然に防いでおきたいものです。

連年贈与と疑われたり、名義預金と疑われたりすることは気分がよくないです。

税務調査で指摘されることのない様に少々手間でも以下のことはやっておきましょう。自分たちを守るためにも大切なことです。

実行した贈与を疑われないためにやっておきたいこと 5つ

① 毎年の贈与の都度、毎回契約書を作成する(最初の年に10年間○○円贈与するといった内容の契約は連年贈与とされるためダメ)→ 口頭でも贈与契約は成立するが証拠として残らない。

② 契約書は自署、押印もする(できれば実印で) → あげた、もらったの意思確認

③ 履歴が残るように通帳間での振込にする

④ 税金が出れば、贈与税の申告をする

⑤ もらった方が自由に使える状態にしておく → 通帳、印鑑等はもらった方が管理

 

これらは実行した贈与を証明するために必要なことになります。

判例などではこういった事実確認を総合的に見て、連年贈与なのか?毎年都度の贈与なのか?あるいは贈与なのか?または名義預金なのか?を判断しています。

冒頭にあったように今回、国税庁のHPにて先に紹介した暦年贈与サポートサービスは連年贈与にならないといった回答が出ました。

贈与の年ごとに双方の意思を確認して、贈与契約をするこのサービスが「連年贈与でなく、各年ごとの贈与である。」という見解が出たことで、改めて契約書作成等の必要性を感じます。

こういったものや判例をもとに対策していくことが大事です。

相続が発生してからではできない対策、後から疑われる余地のないように実行時にしっかり対策しておきましょう。

 

【編集後記】

昨日、午前中から顧問先へ月次訪問。夕方は新規の方と打ち合わせ。車中ではエアコンつけっぱなしでした。これからは暑さ対策が必要ですね。

 

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次