過去に「相続時精算課税贈与」を受けていたことがわかった場合の注意点

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過去に贈与があって何年も経っていると、どんな経緯で贈与してもらったのか?をなかなか覚えていないようなこともあります。

その中で、過去に「相続時精算課税贈与」を受けていた場合について、注意しておきたいことをまとめてみました。

目次

贈与税の課税には2つのパターンある

今日のテーマをお話しする前に、「贈与税の計算方法が実は2つのパターンある」というのを確認しておきます。

贈与税と言われて何を想像されるでしょうか?

贈与で財産をもらったとしても、年間110万円以下なら贈与税がかからないというのは、よく聞くところです。

これは「暦年課税贈与」というもの。

暦年課税贈与の場合、基礎控除額が毎年110万円あることから、贈与を受けた額が110万円以下なら贈与税の申告も不要ですし、贈与税を払わなくても大丈夫です。

年間110万円超えたら、それ相応の贈与税を払います。

ただ、贈与税の計算方法には、もう1つあって、それが「相続時精算課税贈与」と言われるもの。

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もらう人があげる人ごと(父、母、祖父、祖母など1人ずつ)に選択します。

 

注意

相続時精算課税を選ぶ場合には、最初に選択する年の翌年3月15日までに選択の届出をします。(「相続時精算課税選択届出書」を出すのは、最初の1回だけです。)

なので、父との贈与では、「相続時精算課税贈与」を選択しているけど、母とは、「暦年課税贈与」のままということもありえます。

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相続時精算課税というのは、文字どおり、相続時精算課税を選択した以降に親や祖父母から贈与を受けた場合で、その後にその父母や祖父母の相続があったときに、相続税の申告を通じて贈与を精算するというものです。

なので、過去に払った贈与税は仮払金のイメージです。

通常、仮払金を精算するには、何に使ったかを明らかにする必要がありますから、その意味において、相続時精算課税を選択した場合、贈与税がゼロでも贈与税の申告は必ずすることになります。

相続時精算課税の場合、贈与税は次のように計算します。

相続時精算課税贈与による贈与税額の計算

(贈与財産の価額-特別控除額)×20%=贈与税額

特別控除額には、2,500万円分のワクがあります。このワクは1年ごとというものではなく、贈与をするたびに特別控除額のワクが減っていきます。

累計で2,500万円を超える財産の贈与を受けた場合には、特別控除額はすでに使い切ってゼロになっているので、超えた以降は「贈与財産の評価額×20%」の贈与税を支払うことになります。

あげた人がなくなって相続税の申告をするときに、過去に仮払いした贈与税があれば、相続税からマイナスして差額を相続税として支払うことになります。

ということで、相続時精算課税の説明はここまで。本当はお互いの年齢要件とかあるのですが、ややこしくなるので今回は触れません。

この後が本題。過去に相続時精算課税をしていたことに気づいた場合の注意点についてお話ししていきます。

過去に「相続時精算課税贈与」を受けていた場合の注意点

相続税の申告をするときに気づくことが多いのですが、何年も前に贈与を受けていたことがわかった、ということがあります。

そのとき、通常の暦年課税贈与ではなく、相続時精算課税贈与を選択していたということも。

相続時精算課税を使う場面は、限定的です。

例えば、不動産を贈与する場合だと、どうしても金額が大きくなりますので、相続時精算課税を利用するといったように。

選択する理由については、ともかく。ここではあとで気づいた場合の話に触れてみます。

10年以上も前だと、そもそも相続時精算課税で贈与を受けていたということも忘れているかもしれません。

相続時精算課税を使っていたと後になってわかった場合に、知っておきたい注意点には、次のようなものがあります。

取り消しができない

贈与税の課税方法には、暦年課税贈与と相続時精算課税贈与の2つがあるというのは、先ほどお話ししたとおりです。
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相続税の対象になる財産の視点からお話しすると、

暦年課税贈与の場合、相続税の計算の対象になるのは、相続開始前3年以内の贈与を受けた財産だけです。

一方で相続時精算課税を選択していた場合、選択した後なら何年前の贈与財産でも相続税の計算の対象になります。たとえ10年前でも。20年前でも。

そして相続税申告に加算する贈与財産の評価額は贈与時の評価額で、特別控除額を控除する前の金額です。

過去に贈与を受けている場合、相続財産に加算する金額はいくら?

過去に2,000万円の財産の贈与を受けていた場合(特別控除額2,500万円あり)

  • (2,000万円-2,500万円)≦ 0 なので贈与税はゼロ
  • 相続時に加算する贈与財産 2,000万円

ということからも、特別控除というのは、贈与のときにいったん控除するという意味合いに過ぎません。控除した分について相続税が非課税になると言うわけではありません。

あとで、やっぱり「暦年課税贈与がいい」と言ったところで、一度選択したならば後戻りはできません。

110万円以下でも贈与税の申告が必要

今度は、贈与税申告の対象になるか?贈与税がかかるかどうか?からお話しします。

暦年課税贈与だと、110万円以下の贈与があっても贈与税はかかりません。

もちろん、申告する必要もありません。

一方で相続時精算課税を選択していると、相続時精算課税を選択した人からの贈与なら110万円以下でも贈与税の申告は必要になります。

税務署も特別控除額があといくら残っているか?を知りたいのです。

そんなこと気にもせず、「110万円以下だから贈与税がかからないでしょ」と思っていても相続時精算課税を選択していれば話は違ってきます。

通帳などを確認して過去に贈与を受けていれば、期限後申告しておくなどの対応が必要でしょう。相続税の申告をしたらそのうち税務署も見つけるでしょうから。

「このお金、相続財産に含めて相続税を計算しないといけないのでは?」と。

期限後申告だと特別控除が使えない

すでに申告期限が過ぎている贈与税の申告をする場合、特別控除額に残りがあったとしても、その残りの特別控除額のワクは使えません。(翌年以降は期限内に申告すれば残りのワクを使えます。)

どういうことか?

もし、申告期限内に贈与税の申告をしていれば、贈与税がかからなかったとしても、これが期限後の申告だと、いったんは贈与税(+ペナルティ)を払う必要があるということです。

 

期限内の申告と期限後の申告で支払う贈与税が変わる?

100万円の贈与を受けた場合(特別控除額の残額あり)

  • 期限内に申告 (100万円-100万円)×20%=0円
  • 期限後に申告 (100万円-0円)×20%=20万円 +ペナルティ(無申告加算税+延滞税)

ただ、相続時精算課税という名のとおり、最終的に精算はされます。

精算課税贈与を選択した贈与した父母や祖父母に相続があった場合、その相続税の申告で払うことになる相続税からマイナスすることで精算します。(贈与税額控除といいます。)

(本来の相続税)100-(過去に払った贈与税の累計)30=(支払う相続税)70

相続時精算課税は、あげた人の相続があったときに、贈与した財産を相続財産に加算することになっていました。たとえ20年前であっても。

同じ財産に2重に課税はしないということです。もし、相続税より相続時精算課税で過去に払った贈与税の方が多い場合には、払い過ぎなので還付されます。

 

補足
暦年課税贈与の場合には、還付はないです。

ただ、財産をあげた人がいつなくなるのかは誰にもわかりませんから、仮払いした贈与税がいつ返ってくるのか誰にもわかりません。

相続時精算課税を選択するなら慎重に

暦年課税贈与と相続時精算課税贈与では、扱いもかなり違ってきます。

確かに暦年課税贈与よりも相続時精算課税を選択する方がいい場面もあります。

ただ、相続税対策という視点で見れば、1年、2年という短期間で終わるものではなく、長きにわたるもの。

その途中で「やっぱり…」と気持ちが変わることもあるでしょうし、そのときどきで動きやすい方がいいのかなと考えています。

暦年課税贈与でも、時間をかければできることも多いです。

  • 毎年コツコツ贈与をする(暦年課税で110万円以下なら贈与税の申告も納税もなし)
  • 相続税の対象になる財産を減らす(暦年課税贈与なら3年内の贈与財産だけが対象)
  • 気分次第で選択肢を持てる(相続時精算課税は一度選択すると後戻りできない)

相続時精算課税を利用したいときには、前述したような理由もあり、選択をするなら慎重に検討したいところです。

もし選択するなら事前に税理士に相談した方がいいでしょうね。


【編集後記】
昨日は事務処理の仕事とセミナーのスライド作成を中心に。子供たちがアナと雪の女王2を見たいといい出して日曜日に行くことに。ひとまず明日予約する予定です。

【昨日の1日1新】
※「1日1新」→詳細はコチラ
とある問合せ


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